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笑顔はうつる(場面緘黙症)

新型コロナウィルス感染拡大防止の為、4月よりビジネススクールでは「在宅支援」が始まりました。

就労移行支援では「在宅支援」は従来からある制度でしたが、
いままで頑張って通所される利用者さんが多かったので、在宅支援は初めての試みでした。

はて?どうやって支援するの?

支援の方法は、電話(ライン電話の場合だと画像が映るのでお互いの様子が確認出来ます)での体調等の確認、在宅での課題についての進捗状況や不安・悩みがないかを尋ねます。

最初はみんな「自分の顔が画面に出るのが変な感じがする~💦」
「自分の声ってこんなんなんだ~」
と恥ずかしがっていましたが、次第に慣れていったようです。

5月中旬に石川県の緊急事態宣言が解除になり、現在は利用者さんも徐々に通所されるようになってきました。

場面緘黙症の障がいがあるAさん

私が担当している利用者さんで「場面緘黙症」の障がいがある利用者さん(以下、Aさん)がいます。
この障がいは、人と会話や挨拶をするのが困難な特性があります。
Aさんは、ご家族とは会話が出来ますが、小学校の時から外部の人と会話等をすることが困難です。

Aさんに会話が困難な理由を尋ねたところメモで「自分が話をしている姿を見られるのが嫌だから」とのことでした。

Aさんは長年、金沢市内の福祉作業所に通所されていましたが、ビジネススクールのスタッフと利用者さんがその作業所を見学にお邪魔した時にたまたま見かけたらしく、「カラフルって楽しそうだなぁ~」と思われ、親御さんや相談支援員さんと相談をして、作業所を退所してカラフルに来られました。
(その後、その人って誰?と尋ねても、はにかんで教えてくれませんでした…私の予想では恐らくGMだと思います)

彼女は物静かな雰囲気なので、通い慣れた作業所を退所する決意をするほどとは、見かけと違って行動力があるなぁと感心しました。
「自分を変えたい!!」と強く思われたことに、こちらも応えてあげたい!と思いました。

(※イメージです)

以前、ビジネススクールに「場面緘黙症」の障がいがある利用者さんが通所されていましたが、その方はとても小さな声でしたが挨拶と会話を行うことが出来ていたので、スタッフや利用者さんとのコミュニケーションにおいて不都合はありませんでした。

その利用者さんは、当初はAさんと同じく話をすることが出来なかったのですが、中学時代に先生に勇気を出して挨拶をしてみたところ、すごく褒められて自信がついて、小さな声だけれども話すことが出来るようになったことを教えてくれました。

ところが、Aさんは挨拶も声に出す事が困難です。

他の利用者さんは教室に入って来られたら「おはようございます」とスタッフや利用者さんに挨拶されますが、
Aさんは、教室にそ~っと入って来られます。

なので、誰も気が付かないと知らない間に教室の椅子に座っている時があります。

Aさんの目標の一つに「一般就労をする」があります。

どんな仕事でも挨拶は基本だと思うのです。
う~む…どうしたら良いものか…。

「以前いた作業所では挨拶はどうしていたの?」
と尋ねてみましたが、恥ずかしいのか気まずいのか何のアクションもしてもらえませんでした。

Aさんは就労移行なので利用期間は2年間です。
カラフルに来て「変わりたい!」という気持ちがあることを知っているので、何とか通っているうちに頑張って欲しいと思っています。

私なりに色々と考えてみました。
Aさんに、スタッフや利用者さんからの挨拶があったら「ぺこっ」とお辞儀をしてみよう、そして帰りは「さようなら」の代わりに「バイバイと手を振ってみよう」と提案してみました。

最初は抵抗があったものの、お辞儀とバイバイを恥ずかしそうですが、してくれるようになりました。

Aさんは、コロナの影響で親御さんからの提案もあり「在宅支援」になりました。

在宅支援になる前にAさんに教室で私と一緒に自宅で行う課題を考えました。

①新聞を読んで気になった記事を3つ選んで、その感想を書く
②ビジネスマナーの本を3テーマずつ読んでみる
③運動不足にならないように散歩やラジオ体操をする
④文字を書くのが少し苦手なので、ペン習字の練習をしてみる
⑤運動不足にならないように、ラジオ体操か近所を散歩してみる

以上の項目について、私も電話で確認しますが、お父様にもお願いしてご自宅で課題のチェックをして頂くことになりました。

就労移行の在宅支援では、午前と午後の2回電話でお話します。

Aさんは、お話するのは困難なので、指でOKマーク👌や✖マークを作ってジェスチャーでやり取りします。

これがなかなか大変!

スマホのカメラより下でジェスチャーされることが多く、
「もっと上でジェスチャーしてみて~💦」
と頼んでも、なかなか自分の顔の前でジェスチャーするのは恥ずかしいようです。

Aさんの表情や様子から心情を読み取るしか術がありません。

教室でAさんの顔をちゃんと見ているつもりでしたが、
連日、画面越しですが、よ~く観察してみると、
ライン電話の映像を切る時に私が
「また明日ね~、バイバイ~(^^)/」
と手を振ると、私が手を振っている様子が滑稽なのか?手を振るのが恥ずかしいのか?分かりませんが、
とてもいい顔で「にこ~っ(^^)♡」と笑うのです。

「あれ?こんなかわいい笑顔、教室で見た事が無かったなぁ♪」と思いました。

変な話ですが、もし、新型コロナウィルスの流行が無かったら、私はずっとこの笑顔を知らないままだったのかもしれません。

暗い雰囲気になりがちな状況下ですが、私にとってはAさんの新たな一面を発見をすることが出来てとても嬉しかったです(^^)/

場面緘黙症の方とのコミュニケーションについて

筆談やジェスチャーでのやり取りもありますが、現代では有り難いことにスマホのアプリで場面緘黙症の方をサポートするものがあります。

私がAさんとのやりとりで使っているのが「コミュサポ」というアプリです。

入力した文字を読んでくれたり、自分の気分をイラストで伝える機能等いろいろあります。
自分が使いやすい機能を選んでコミュニケーションを図ります。

しかし、便利なツールとはいえ、今後は就職して生活していく時、アプリに頼りっぱなしという訳にもいかないと思うのです。

外部の人に対して、声を発する事はとても勇気のいることだと思います。
でも、この障がいは時間がかかりますが治すことが出来るのです。

いきなり人と話すことは難しいので、出来そうな小さなことから少しずつ取り組んでいって、人とのコミュニケーションは楽しいことを実感すること、自分は出来た!と自信を持つことだと思います。

Aさんの場合、現在はお辞儀とバイバイと手を振ることが課題ですが、今月の在宅支援中(5月末まで)にライン電話で画面越しに頑張って「おはようございます」と言ってみることを約束しました(出来たらいいな~♫)

利用者さんの笑顔を見られるのはとても嬉しいこと♪

利用者さんは、それぞれに何かしらの生きづらさを抱えられています。

そんな中でも、カラフルの中で他の利用者さんやスタッフと関わっていくことで笑顔になることが増えていくのを見ることが出来るのは、とても嬉しいことです。

私が「今日は気分があまり良くないなぁ~」と思う日でも、利用者さんの笑顔を見ると、自然とこちらもつられて笑顔になってしまいます。

笑顔は伝染するのですね(新型コロナはもう終息して欲しい!)。

みんなが笑顔でいられるように、これからも支援をしてきたいと思います。

【余談】
ビジネススクールの利用者さんには画伯がいます(あだ名はツチノコです)。
教室のドアに貼っている「今日の言葉」に言葉ではなく、みんなを楽しくさせるイラストを描いてくれます。
私がいつもツボにはまって大笑いするので、ドアに貼る前に嬉しそうに見せに来てくれます。


私はこういうユーモア大好きです♫
みなさんは如何でしょうか?

 

まとめ

コロナの影響で、それぞれの利用者さんに対する支援方法に変化があって戸惑いがあることもありましたが、通所時と同程度の支援をいかにして提供できるか?を考えるいい機会になりました。