自動車教習とコカ・コーラ

発達障害で引きこもりの経験がある利用者さんで、自動車教習を頑張っている方がいます(以下、Aさん)。
教習するにあたり、事前に主治医の先生のOKをもらいました。




Aさんは40代の男性です。
私は「今頃どうして取得するの?」と驚くと共に疑問に思いました。

「自動車が大好き!」「車を運転したい!」と思っている人は若いうちに取得すると思いますし、年をとればとるほど体の機能も劣ってくるので取得するなら早い方がいいと思うのです。

私の母の友人は50代で取得しましたが、母は「友人の車に乗るのが怖い~💦」と話しています…。

 

免許を取得しようと思った理由

Aさんが、免許を取得しようと思った理由は、「健康保険証の他に身分証明になるものが欲しいから」と教えてくれました。
運転免許証ならば大抵の手続は一枚で身分が証明出来るからだそうです。


運転よりも証明できるものが欲しいという発想は私にはありませんでした。

Aさんが外に出るようになって、身分を確認するものを求められるたびに、「運転免許証があればなぁ~」と思ったのでしょう。

もし、Aさんがまだ家にひきこもっていたとしたら、運転免許証が欲しいとは思わなかったでしょう。
外に出るようになって、社会と関わるようになったからこそだと思います。

 

Aさんのこと

Aさんは、発達障害(自閉症スペクトラム)があります。
見た目は「本当に障害があるの?」と思うほどで、少しシャイな方だなぁという印象です。

お話をしてみると、自分独自のこだわりがあったり、過去の自分を強く引きずっているため自己肯定感が低いところがあります。




Aさんは、大学になじめず中退した後、数年間引きこもりを経験されています。

ある日、「このままではいけない!自立するためにも働きたい!」と思い立ち、勇気を出して自宅から外に出られました。
親のすねをかじっているままでは、自分はダメになってしまうと危機感があったようです。



また、親は自分よりも早くいなくなってしまう可能性は高いです。
悲しいですが、それが現実です。

Aさんは、引きこもりを経験をしている方が集まるサークルに参加したり、就労移行支援事業所等を利用したりと色々挑戦していました。

ですが、Aさんの頑張りたい想いと体が思うようについていかない日々が続きました。
通所していた就労移行支援事業所を止む無く退所した後、お世話になっている支援機関から紹介があり、カラフルに来られました。

 

教習は大変!

ネットで「発達障害・運転免許」で検索するとたくさん記事が出てきます。
発達障害の方がいかに免許取得でつらさを抱えていることが分かります。

学科の内容が覚えられなかったり、教習で教官とのコミュニケーションや交通状況に臨機応変に対応することにつまづきを感じる方が多いようです。


Aさんは、まずは自動車学校選びから始めました。
数ある学校からどこがいいのか、利用者さんやスタッフに真剣に尋ねていました。

Aさんが選んだのは、私も通っていた学校になりました♪
古い学校ですが、教官の方が親切だったのを覚えています。
「あの学校なら、Aさんは大丈夫!」と思っていました…。

いざ教習が始まると、学科の勉強は「ひっかけ問題みたいなのがあって、とても苦手です💦」とお話されていました。学科については、運転免許センターで試験を受けるだけになりました。




さてさて、問題は自動車に乗っての教習でした。

Aさんのコミュニケーションは独特です。
Aさんの特性として、相手の言葉を深読みしたり、起きていない先の先の事まで考えてしまうことがあります。




何となくですが、教官とのやりとりが想像出来ます(^^;)

「はい、そこで右に曲がって」と教官に言われたら、Aさんは「そこ」が何となく想像できるけれども、自信がないので「そことは、目の前にある十字路のことで間違いないですよね?」と確認しないと前には進めないのです。

Aさんは、自分が安全だと思うまで、何度も何度も確認してから発進します。
自動車の速度もゆ~っくりです。

しびれを切らした教官にお叱りを受ける日が続き、教習に行くのが苦痛でへこんでいることを話してくれました。


また、大学生は9月いっぱいまで夏休みなので、一緒に教習をするのが若い人ばかりで引け目を感じているようです。

スタッフや他の利用者さん、訪問看護の看護師さんに「頑張っていることはすごいことだよ♪」「あともう少しだから頑張って!!」と励ましを受けて、教習を頑張っています。



色んな体験を積み重ねることの大切さ

先日、Aさんと他の利用者さんと一緒に「北陸コカ・コーラプロダクツ株式会社 砺波工場」に見学に行きました。
スーツを着ているのがAさんです。
他の2人の利用者さんはラフな格好ですが、「きちんとした格好をしなくては失礼にあたると思って…」とAさんは話していました。

私がAさんを誘うと「見学に行ったら、工場について説明を受けるという事は、そこで働かなくてはいけないのですか?」と尋ねて来られました。

「見聞を広めるために行くだけで、働く必要はないよ~」と答えました。



 


見学に行く直前にAさんより「実は僕まだコカ・コーラを飲んだことがないんです…。炭酸が苦手で…。どんな味がするんだろう…?」と教えてくれました。

私は思わず「えっ?本当に?」と驚いてしまいましたが、「今日人生初のコカ・コーラが飲めるなんて良い体験になるね!」と不安そうなAさんを励ましました。




工場に着き、見学をさせて頂く前に、ご厚意で昔ながらのビンに入っているコカ・コーラを頂きました。



Aさんは、恐る恐る飲んでみると、やはり炭酸がきつかったのか一口飲んで止めてしまいました。

私が「どうだった?」と尋ねると、「思ったよりも甘かったけど、今日初めて飲む事が出来て良かったです♪」と笑顔で話してくれました。

Aさんは、カラフルに来られてから自動車教習に通ったり、初めてコーラを飲んだりと色んな体験をされています。
パソコンの授業ではMOSの試験勉強をして合格することが出来ました。

私が仕事で受けた研修で、講師の方から「直感が働くというのは、色んな体験を積み重ねているからですよ♪」と教えて頂いたことがあります。

Aさんも色んな体験を積み重ねて、いつも慎重に物事を進めるのも大切なことですが、時には自分の直感を信じて、自分に自信を持って行動出来るように頑張ってほしいなと思います。