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障害とあいさつと生活習慣

ここ最近、私が利用者のみんなを見ていて思うことです。

「○○が出来ない!」と話す利用者さんが多くいます。
私が考えるには、「出来ない」のではなく、その経験が無いため、不安や心配が大きくなって逃げたり避けてしまっているんだよということです。

苦手なこと、困難なことに向き合うのは非常にストレスがかかると思います。
頑張ってやってみようと思っても、ドキドキしたり、「みんなはどう思うかな?」と周りの目が気になったりして、出来ない自分と葛藤すると思います。

カラフルの利用者のみんなには、「やれば出来る!」という達成感や充実感を是非体感して欲しいなぁと思っています。

「おはようございます」が言えないのは?

朝、教室に「うぃーす」と言って入って来る利用者さん(以下、A君)がいました。

※↑イメージです。実際のA君は「ガリガリ君」に黒縁メガネをかけたような素朴な方です。


カラフルに勤めて2年とちょっとになりますが、今まで「うぃーす」と言って入ってこられる利用者さんがいなかったので、少し動揺してしまいました(^_^;)

動揺しているのを隠しながら何事も無かったように
「おはようございます」と私や他の利用者さんがあいさつを返すと、ぺこっと頭を下げました。

A君はカラフルに来られる前は、フリースクールに通われていました。
「フリースクールでは『うぃーす』でも大丈夫だったのかな?」
「あいさつに関しては特に何も言われてなかったのかな?」など色々思いました。

そのまましばらく様子を見ていましたが、やはりA君から「おはようございます」の言葉が出てこないので尋ねてみました。
「どうして『うぃーす』なの?」

すると、A君から予想していない言葉が返ってきました。

「家で誰にも挨拶しないから、『おはようございます』と言うのに慣れていないし、恥ずかしい💦」と顔を真っ赤にして話してくれました。

そうだったのか…。
A君を責める訳にはいきません。
そういう環境で今まで過ごしてきたのだから、「今日からは『おはようございます』と言ってね」と言っても難しいでしょう。
おそらくA君も「おはようございます」とあいさつする方がいいことは分かっているのだと思います。

私も社会人になりたての頃、「お世話になっております」がなかなか言えなかったことを思い出します。

今にして思えばアホだったなぁと思うのですが、「お世話になっていないのに何で言うの?」と疑問に思っていました。学生時代には使う言葉ではないこともあり、口からスラスラ出るまで時間がかかりました。
言っているうちに慣れてきて、何も考えずに言えるようになりましたし、この言葉を使うことで仕事が円滑に進むことがあることも分かりました。

A君も「おはようございます」が言えるまでは時間がかかると思います。
「おはようございます」とストレスを感じる事無くみんなに言えることを体験して欲しいなと思いました。

ここは焦らずにゆっくりと時間をかけていこうと思いました。

障害について

A君は、発達障害と強迫性障害があります。
カラフルの教室はビルの7階にあるのですが、エレベーターに乗るのが怖く、毎朝階段で「ゼーゼー」と息を切らせて教室に来ます。当然帰りも階段を使って帰ります。

終礼が終わり、帰る際は必ず「忘れ物していない?」とスタッフに尋ねてきます。
「自分で確かめてごらん」と促し、自分の座っていた周辺をぐるりと歩いて忘れ物がないと分かって玄関まで行ったところで、再度「本当に忘れ物ない?」と確認します。

また、A君はゲームがとても好きで、ゲームの話になると興奮して声が大きくなったり、周りが見えなくなってしまうことがあります。
でも、授業でみんなの前で発表する時の声は、恥ずかしそうに小さな声で話をします。

「おはようございます」が言えるようになった!!

私の作戦としては、毎日A君に「うぃーす」と言われても、こちらは元気に「A君、おはようございます!」と言い続けることをしてみました。

するとA君のあいさつに次第に変化が出てきました。

「うぃーす」

顔を下に向けたまま「お・・・す」

恥ずかしそうに「おは・・・す」

スタッフの顔を伺いながら「おはよ・・・す」

照れ隠し?なのかタイムカードを探しながら「おはようご・・・す」

何もせずに「おはようございます」

A君の「おはようございます」を初めて聞いた時は「え?空耳かな?」と一瞬思いましたが、「いや、今ちゃんと言えた!すごーい!!」と嬉しくなりました。
「A君、『おはようございます』が言えるようになったね!」と言うと、頭をガシガシ掻いて照れくさそうにしていました。

A君は毎日恥ずかしさと葛藤しながら頑張っていたと思います。
最初は「あいさつなんかどうでもよくないですか?」と話していたのに、今はあいさつをしています。
少しずつ努力を積み重ねていくことの大切さを実感してもらえたかな?と思います。

「おはようございます」と思い切って言えたという体験はA君にとってかけがえのないものになったと思います。

 

魔法にかかった?

カラフルに見学に来られた方とお話していた時、「利用者さんが元気に変わっていくのって魔法みたいですね」と言われました。

日々利用者さんと接していると、当初に来られた時の事を忘れがちになってしまいます。
お言葉を頂いて「ハッ!!」と気付いて、「本当にそうですね~私も不思議です」と答えました。

みんなが笑顔でいられることの大切さを改めて身に染みて感じました。

A君が色んなことに挑戦したり体験したりて出来る事が増えて笑顔が増えてくれることを願っています。