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「場面かんもく(緘黙)症」の障害について

「場面かんもく(緘黙)症」という障害をご存知でしょうか?

私は、利用者さん(以下、Aさん)に、この障害の傾向がある方がいて初めて知りました。
Aさんは医師からハッキリとした障害の診断はされていません。
自分の障害が何なのかモヤモヤしていた時、テレビを見て、この障害を知り、当てはまる症状がいくつかあり、自分もそうではないかと思ったそうです。

 

認識が低い障害

この障害の症状としては、次のようなものがあります。

1、全く発話(おしゃべり)ができない
2、小声で少しだけ話せる
(家族や慣れ親しんだ人とは普通に会話が出来ます。家では非常におしゃべりになる事が多い。話せなくても集団の中にいる事を楽しむ人もいる。積極的に輪にはいろうとせず、傍らから眺めてニコニコしたり実際に遊びに参加することもあります)
3、無表情(学校などにいる時は無表情で人との交流を避けようとする)
4、食事ができない(人目が気になって食事ができない。一人や少人数だと大丈夫)
5、トイレに行けない(トイレに行ったな~と思われるのが恥ずかしくなっていくことができない)
6、体がこわばる(話そうとすると体が硬直してしまう)
7、体に力が入らない
8、知的好奇心が旺盛、感性が豊か、執着傾向がある、完璧主義である

この障害の治療法としては、心理療法、薬物療法、行動療法等の専門家による治療のほか、職場や学校、家庭での支援等の周囲の協力による支援がありますが、確立した治療方法が無いそうです。

それは、場面かんもく症の認識が低いことと専門家の少なさも原因となっています。

 

障害の要因について

この障害になる要因として次の3つがあります。

生物学的要因(遺伝・気質)、心理学的要因(不安、苦手意識)、社会的・文化的要因(生育環境)があります。

また、一つの要因が原因となるわけではなく、様々な要因が重なって発症することが多いそうです。

原因として多いのが子供の頃に親から虐待を受けたことで、発症年齢は2〜5歳、症状のピークは12〜19歳といわれています。

大人になれば自然治癒すると思われがちなのですが、大人になっても苦しむ人が多いのが現状とのこと。

仮に克服したとしても、発話をする際に困難が持続してしまい社会不安、社交不安に苦しむ人も少なくないので、早期に克服することが重要な障害なのです。

 

性格ではなく、障害であること

Aさんは、数カ月前にカラフルに来られてから今日に至るまで、お話しする声は小さく、表情もあまり変わらないので、「今日の気分はどうなのかな?」と一見分からないことがあります。

「恥ずかしがり屋さん」ということではなく、そういう障害なのです。

ところが、Aさんは、電話の声はとても大きくハッキリとお話しされます。一瞬、「えっ、誰?本当にAさん⁉︎」とびっくりしてしまいました。

でも、教室内では耳をそばだてても、やっとかすかに聞こえる声でお話されるのです。

Aさんによれば、皆の前や相手の顔が見えると恥ずかしい気持ちが大きくなり、話せなくなってしまうとのことでした。

Aさんはカラフルの自由時間では、好きな小説を読んだり、CDを聞いたり、ゲームをして過ごしています。

みんなとコミュニケーションを自分からとることはしません。でも、お話しするのは嫌いではなく、こちらから話しかけるとポツポツと言葉を選んでお話しされます。

現代はIT化が進んだとはいえ、人と人とのコミュニケーションはメールやSNSを使って出来る事もありますが、ダイレクトに人に自分の想いを伝えるには、自分の声、表情等で伝える必要があります。

 

障害をカミングアウトすることの重要性

Aさんは、先日あった障害理解の授業で自分の障害について発表をしました。

この障害は、周りの人に自分の障害を話すことが重要だそうです。確かに、黙っていては「あの人はシャイな人なんだな」と思ってしまいます。

Aさんは、自分の障害のほかに自分の生い立ちも詳しくお話しされました。

学生時代、人前で食べることが出来ず、お昼ご飯をいつも一人で食べていたとのこと。
また、トイレに行くことも出来なかったと教えてくれました。この2つの事は「恥ずかしい」ことが原因とのこと。

また、厳格な父親との確執もあり、つらい家庭環境の中で育ったこと、家庭の事情でやむを得ず高校を中退したこともお話しされました。

普段、あまり他の利用者さんとコミュニケーションをとっていないので、みんなは「そうだったんだぁ~」と話を聴いてAさんを理解することが出来ました。ある利用者さんは「つらい生い立ちまで話してくれて、Aさんのことがよく分かったし、配慮して欲しい事に気を付けようと思う」と話してくれました。

 

生きやすくなるために出来る事は何だろう?

先にも述べましたが、この障害は、自然治癒ということはありません。本人の変わりたいと願う強い意思と周りの支援が必要なのです。

周りの支援としては、障害に対する正しい理解と配慮、話しやすい環境づくり、医療機関等との情報の共有と連携が必要です。

本人が出来ることとしては、今の自分で生きづらいと思っていることを変えるにはどうすれば良いかを考え、実践して気づきを得ることです。

 

Aさんの将来の希望

Aさんは、障害理解の時、最後に自分の将来の希望についてもお話されました。

カラフルでコミュニケーションをもっと学びたい。
もう一度高校に入り、一から勉強したい。
卒業後は、仕事に就いて一人暮らしをしたい。

発表前にAさんから原稿を見せてもらったのですが、文面から、ここには書かれていないけれども実現させたいことが沢山あふれているんだろうなぁと想像できました。

自分の親と過去を変えることは出来ませんが、未来は変えることは出来ます。

でも、それが実現するのは、Aさんの意思次第なのです。

私は、障害理解の授業でAさんの将来の希望を知り、今まで以上に彼女を応援したい気持ちでいっぱいになりました。

この世界で生きていくには、多くの人と関わっていかなければいけません。自分を変えることは、Aさんにとっては辛い状況だと思います。

Aさんには毎日少しずつでもいいので周りの人とコミュニケーションをとって、その楽しさを知って欲しい。将来は社会の中でのびのびと活躍して欲しい。そのための協力は惜しみません。

Aさんなら、きっとそれが出来るし、夢を叶える力を持っていると信じています。

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